私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
 奏花が喜んでいるのを見て、大満足でリビングに戻るとスマホが鳴った。
 相手は――――

「梶井か」

 無視しようと思ったけれど、奏花の『自立した男、しっかりすれば結婚』の条件を思い出し、渋々、梶井からの電話をとった。

『深月、久しぶりだな』
 
 せっかく、いい気分だったのに梶井から電話とはついてない。
 けれど、俺は大人の対応を見せた。

「久しぶり」

 俺の一言に気を良くしたのか、梶井の声が明るくなった。

『なあ。俺とお前の演奏の依頼があって話を聞いたか? よかったな。深月、俺と共演できて』
「この電話は使われておりません」

 電源を切った。
 まさか、またあいつと演奏をするのか。
 なぜか俺と梶井の演奏をまた聴きたいという要望が多く、俺が断り続けていたにも関わらず、マネージャーの宰田(さいだ)が引き受けた。
 最悪だと思いながら、電源を切ったスマホを眺めていると、二個目のパンプキンプリンを手にした奏花がやってきた。

「なにが、この電話は使われておりませんよ。誰から電話だったの?」
「知らないやつ」
「またそんなこと言って。どうせ仕事の電話でしょ。ちゃんと仕事はしなきゃだめよ」
「わかってる。今の俺は以前の俺とは違う。真剣に仕事をしているよ」

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