私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「み、み、み……」
「ミンミンゼミか?」
「違うよっ!」

 望未はぶつぶつ文句を言いながらドイツ語で書かれた新聞を広げた。
 その上に花をのせ、テーブルに並べる。望未は真剣に大量の花を一つ一つ花束にしていく。
 しばらくかかりそうだなと眺めながら、仕事のスケジュールを確認するのに手帳のページをめくる。
 そうしている内に望未がまた不審な行動に出た。
 花瓶が足りないと言って、パッケージにドイツ語とエンブレムが印刷された瓶を手にする。それはビール瓶だ。

「おい、待て。まさかビール瓶に花を生けて飾るつもりか?」
「だって、足りないし」
「……バケツにしろよ。空き瓶は後で俺が持っていくからな」
 
 ドイツにはペットボトルと空き瓶の回収システムがある。持っていくと小銭がもらえるが、目的はリサイクルだ。

「花瓶にした後じゃだめ?」
「そのビール瓶、何本飾るつもりだ?」
「えーと、五本くらい?」
「集めるな! アルコール依存症かと思われる。バケツにでも入れておけよ」
「そんなー!」

 アンティーク調のバケツを差し出した。
 ビール瓶より、これに入れた方がまだ見栄えがする。
 可愛いのにあんまりだよねと言いながら、望未(みみ)は残念そうにバケツに花を入れていた。
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