私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
 まったく、こいつは放って置くとどこまでも自由に生きるな。
 俺はこいつをウサギに例えたが、猫だったかもしれない。
 ドイツ語を勉強中の望未だが、意外と物おじせず、一人でどこでも出かける。 
 口には出さないが、俺としてはけっこうヒヤヒヤしている。

「出かける時はどこに行くか、ちゃんと言ってから出かけろよ」
「えっー! そんな子供みたいな扱いなの?」
「そうだ」
「普通は女性一人だと危ないから俺が一緒に行こうとかじゃないの?」
「まあ、危ないな」

 含む言い方をすると、望未は不機嫌そうにリュックの中身を片付けていた。市場でなにを購入したのか知らないが、冷蔵庫はいつも望未が買った食材でいっぱいだ。
 俺一人の時はほとんど空だったが、気になったものはなんでも食べてみているようだ。
 時々、カフェ『音の葉』の知り合いに連絡し、レシピを教えてもらっているらしく、食事は望未が作っている。

「望未。来週の予定だが、しばらくコンサートでいない」
「うん。オケのコンサートなんだよね。いってらっしゃい」

 あっさり望未は俺を送り出す姿勢を見せた。
 いや、違うだろ?
 そこは寂しいとか、一緒に行きたいとかあるよな?

「あのな……」

 旅行も兼ねて一緒にどうだと言おうとした。それが―――

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