私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
ない、というより感情をおし殺している?
私に対しての不満や怒りを感じた。
なぜ、今日―――?
知久のバイオリンの音が聞こえたような気がした。
まだ彼の音が残っている。
あの歌うようなバイオリンの音は女性客を魅了したけれど、笙司さんの心は穏やかではなかったということ。
嫉妬心を隠しきれていなかった。
納得した私と、認めたくない笙司さん。
そして、私に結婚したいと言わせて、自分の虚栄心を満たすつもり?
「笙司さん。私が大学を卒業してから、三年は結婚しないと父と約束したはずよ。父から譲られたビルの経営をきちんとやりたいの」
父から生前贈与されたビルを私は持っている。
それは私を渋木家から、遠ざけるために父が決めた。
父は本妻である唯冬の母親に配慮して、大学に入学すると同時に私を渋木家本邸から出したのだった。
「俺という婚約者がいるのにビルの経営が必要か? 君がなぜ、そこまで自立することに拘るのかわからない」
「ビルの一階に作ったカフェもやっと軌道にのってきたの。私はあのカフェを音楽家が集まるようなサロンにしたいのよ」
「音楽家が集まるサロンね……。お嬢様が考えそうなことだ。簡単にできることじゃない。失敗して勉強するには金額が大きすぎる」
私に対しての不満や怒りを感じた。
なぜ、今日―――?
知久のバイオリンの音が聞こえたような気がした。
まだ彼の音が残っている。
あの歌うようなバイオリンの音は女性客を魅了したけれど、笙司さんの心は穏やかではなかったということ。
嫉妬心を隠しきれていなかった。
納得した私と、認めたくない笙司さん。
そして、私に結婚したいと言わせて、自分の虚栄心を満たすつもり?
「笙司さん。私が大学を卒業してから、三年は結婚しないと父と約束したはずよ。父から譲られたビルの経営をきちんとやりたいの」
父から生前贈与されたビルを私は持っている。
それは私を渋木家から、遠ざけるために父が決めた。
父は本妻である唯冬の母親に配慮して、大学に入学すると同時に私を渋木家本邸から出したのだった。
「俺という婚約者がいるのにビルの経営が必要か? 君がなぜ、そこまで自立することに拘るのかわからない」
「ビルの一階に作ったカフェもやっと軌道にのってきたの。私はあのカフェを音楽家が集まるようなサロンにしたいのよ」
「音楽家が集まるサロンね……。お嬢様が考えそうなことだ。簡単にできることじゃない。失敗して勉強するには金額が大きすぎる」