私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
6 私と彼の 出会い
私が渋木家に引き取られたのは中学生の時だった。
母と父の間にどんなやり取りがあったか、私には知らされなかった。
でも、私を母は捨てたのだということだけは理解できた。
父が私を引き取ることになったのは、母に父とは別の恋人ができたから。
いつも母は帰りが遅く、休日はいないことが多かった。
私にいい暮らしをさせたいから、父と暮らしなさいと言っていたけれど、どこまでが本心だったのだろうか。
父の物とは違う男物の香水の香り、父と違う男の人と会っていたこと。
母は私に『あの人には内緒よ?』なんて言っていたけど、父は気づいていたと思う。
私は自分が愛人の子であることを知らず、母から父とは、理由があって別居しているとだけ聞かされて育った。
だから、てっきり二人は理由があって、ただ別居しているだけで、本当の夫婦なんだと私はずっと思い込んでいた。
さすがにおかしいと思い始めてきたのは小学生の頃。
『お母さん。どうしてお父さんは一緒にいないの?』
家族が出てくるアニメを観ていて、私は母に尋ねた。
『お父さんには別の家があるからよ』
そう、家があるの―――母はなにも言わなかったけど、私はそれだけで理解した。
そして、私はそれに関して、なにも触れないようにしてきた。
美しい母の歪んだ顔を見たくなかったから。
母の口癖は『愛していても一緒にいられない人もいるのよ』だった。
だから母は自分と一緒にいてくれる人を選んだのだ。
いつも一緒にいた私じゃなくて、恋人を。
けれど、自由奔放な母にとって、渋木の家に入ることは最初から無理な話だった。
渋木の家に来て、母が愛人で満足していた気持ちが理解できた。
住む世界がまったく違っていた―――ここは。
母と父の間にどんなやり取りがあったか、私には知らされなかった。
でも、私を母は捨てたのだということだけは理解できた。
父が私を引き取ることになったのは、母に父とは別の恋人ができたから。
いつも母は帰りが遅く、休日はいないことが多かった。
私にいい暮らしをさせたいから、父と暮らしなさいと言っていたけれど、どこまでが本心だったのだろうか。
父の物とは違う男物の香水の香り、父と違う男の人と会っていたこと。
母は私に『あの人には内緒よ?』なんて言っていたけど、父は気づいていたと思う。
私は自分が愛人の子であることを知らず、母から父とは、理由があって別居しているとだけ聞かされて育った。
だから、てっきり二人は理由があって、ただ別居しているだけで、本当の夫婦なんだと私はずっと思い込んでいた。
さすがにおかしいと思い始めてきたのは小学生の頃。
『お母さん。どうしてお父さんは一緒にいないの?』
家族が出てくるアニメを観ていて、私は母に尋ねた。
『お父さんには別の家があるからよ』
そう、家があるの―――母はなにも言わなかったけど、私はそれだけで理解した。
そして、私はそれに関して、なにも触れないようにしてきた。
美しい母の歪んだ顔を見たくなかったから。
母の口癖は『愛していても一緒にいられない人もいるのよ』だった。
だから母は自分と一緒にいてくれる人を選んだのだ。
いつも一緒にいた私じゃなくて、恋人を。
けれど、自由奔放な母にとって、渋木の家に入ることは最初から無理な話だった。
渋木の家に来て、母が愛人で満足していた気持ちが理解できた。
住む世界がまったく違っていた―――ここは。