私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
大理石の床の広いパーティールーム、庭に噴水があり、ゲストルームはお手伝いさん達によって整えられていた。
私が渋木の本邸にやってきて、理由をつけて父は親戚を集めた。
それは私のお披露目会で、私の存在を親戚に認めさせるためのものだった。
ここぞとばかりに好奇の目でじろじろと眺められ、父は私のことを手がかからない子で、とてもいい子で、優秀だと、親戚に説明していた。
いつも堂々としている父が私のせいで、頭を下げているのを見て、胸が痛んだ。
私にできることはなく、人形のように黙って座り、時間が過ぎていく。

「愛人の子を引き取るなんて渋木の奥様もお可哀想ねぇ」

「本当に父親は渋木なのかしら。頼るところがないから、一番お金を持っていそうな渋木の家に押し付けたんじゃないの」

「本邸に入るなんて図々しい」

集められた親戚達は私に聞こえる声で、文句を言っていた。
ずっと続く、その悪意ある言葉と居心地の悪さに耐えきれず、その場から逃げてしまおうと決めて、椅子から立ち上がったその時。

「待った」

私の手を掴んだのは、私と同じ年頃の男の子だった。
華やかな顔立ちとすらりとした美しい指。
そして、お金持ちが通う中学校の詰襟の制服を着ていた。
渋木の親戚だろうか。

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