私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「ここから逃げたら、ずっとあいつらから逃げ続けることになるよ。それでいいの?」
『あいつら』とは『親戚達』のことを言っているのだとわかった。
私は彼を見つめた。
同じ年頃とは思えない大人びた態度。
まさか、弟?
「あなたは私の弟?」
「違うよ。俺は陣川知久」
弟ではなかった。
明るく快活そうな目とあふれでる自信。
彼もまた、育ちのいいお坊っちゃんであることは一目見ただけでわかった。
「俺の家の陣川と渋木の家は仕事関係だけじゃなくて、昔から続く家同士のつながりもあるからさ。親戚が集まる場でも呼ばれるんだ」
大人達が遠慮がちに彼のほうを見ている。
見られることに慣れているのか、彼は平然とした態度で大人達の視線を受け止めていた。
「知久君、ここにいたのー?」
「おしゃべりしましょうよ」
「バイオリン弾いてー」
高校生くらいのお姉さんから幼稚園児くらいの女の子まで、彼を呼んでいた。
笑顔を作ったまま、小さい声で呟くのが聞こえた。
「面倒だな」
断るのかと思っていたら、さっき以上の笑顔を作り、にっこりと彼は微笑んだ―――ように見えた。
私にはそれが作り笑いだと分かっていたから、笑顔には見えなかった。
『あいつら』とは『親戚達』のことを言っているのだとわかった。
私は彼を見つめた。
同じ年頃とは思えない大人びた態度。
まさか、弟?
「あなたは私の弟?」
「違うよ。俺は陣川知久」
弟ではなかった。
明るく快活そうな目とあふれでる自信。
彼もまた、育ちのいいお坊っちゃんであることは一目見ただけでわかった。
「俺の家の陣川と渋木の家は仕事関係だけじゃなくて、昔から続く家同士のつながりもあるからさ。親戚が集まる場でも呼ばれるんだ」
大人達が遠慮がちに彼のほうを見ている。
見られることに慣れているのか、彼は平然とした態度で大人達の視線を受け止めていた。
「知久君、ここにいたのー?」
「おしゃべりしましょうよ」
「バイオリン弾いてー」
高校生くらいのお姉さんから幼稚園児くらいの女の子まで、彼を呼んでいた。
笑顔を作ったまま、小さい声で呟くのが聞こえた。
「面倒だな」
断るのかと思っていたら、さっき以上の笑顔を作り、にっこりと彼は微笑んだ―――ように見えた。
私にはそれが作り笑いだと分かっていたから、笑顔には見えなかった。