私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
私は婚約してから、それを知り、章江さんに彼女のことを言ったことがあった。
けれど、返ってきた言葉はひどいものだった。
『あら。あなたの母親もそうだったでしょ? これで清加さんの苦しみが少しでも理解できたのならよかったわ。浮気されているのが嫌なら、笙司さんに気に入られるように努力したらどう?』
『そうよ。清加さんは努力して、小百里の母親から渋木のおじ様を取り戻したのよ。小百里もそうすれば、いいでしょ』
その場に毬衣さんも清加さんもいたけれど、笙司さんに怒るどころか、私が悪いというような空気だった。
苦しそうな顔でうつむいたまま、清加さんは黙っていた。
あの時も私は泣けなかった。
まるで私に傷つく権利がないというような雰囲気に負けてしまって、なにも言えずに黙ってしまった。
「……ネックレスをありがとう」
知久は私の幸せを願ってくれている。
それは私にとって、どんなものよりも嬉しいことだった。
「うん、よかった。返されたらどうしようかと思ってた」
「はずさせる気もないくせによく言うわ」
「まあね」
ネックレスを眺めていた私を微笑みながら、見ていた知久が唐突に言った。
「小百里。俺と結婚しようか」
一瞬、私の聞き間違えかと思った。
「結婚すれば、俺とずっと一緒にいられるよ?」
突然のプロポーズを冗談だと思って、その言葉を聞き流した。
なにも答えない私を知久は悪い顔をして、笑っていた。
そう―――私が気づいていないだけで、全てはもう動き出していた。
この狡猾な悪魔、メフィストフェレスによって。
けれど、返ってきた言葉はひどいものだった。
『あら。あなたの母親もそうだったでしょ? これで清加さんの苦しみが少しでも理解できたのならよかったわ。浮気されているのが嫌なら、笙司さんに気に入られるように努力したらどう?』
『そうよ。清加さんは努力して、小百里の母親から渋木のおじ様を取り戻したのよ。小百里もそうすれば、いいでしょ』
その場に毬衣さんも清加さんもいたけれど、笙司さんに怒るどころか、私が悪いというような空気だった。
苦しそうな顔でうつむいたまま、清加さんは黙っていた。
あの時も私は泣けなかった。
まるで私に傷つく権利がないというような雰囲気に負けてしまって、なにも言えずに黙ってしまった。
「……ネックレスをありがとう」
知久は私の幸せを願ってくれている。
それは私にとって、どんなものよりも嬉しいことだった。
「うん、よかった。返されたらどうしようかと思ってた」
「はずさせる気もないくせによく言うわ」
「まあね」
ネックレスを眺めていた私を微笑みながら、見ていた知久が唐突に言った。
「小百里。俺と結婚しようか」
一瞬、私の聞き間違えかと思った。
「結婚すれば、俺とずっと一緒にいられるよ?」
突然のプロポーズを冗談だと思って、その言葉を聞き流した。
なにも答えない私を知久は悪い顔をして、笑っていた。
そう―――私が気づいていないだけで、全てはもう動き出していた。
この狡猾な悪魔、メフィストフェレスによって。