私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「だから、もうすぐ悲しいことは全部なくなる。俺がなくしてあげるよ」
「なにを言ってるの」
「そのうちわかる」
目を細め、笑う知久はなにを企んでいるのだろうか。
それが良からぬことであることは間違いないのだけど。
チェーンから指を抜き、知久はついばむように私の唇にキスをする。
「そうだ。スマホの電源、小百里のも入れておくよ」
「切ってあったの?」
「そーだよ。邪魔されたくないし」
無邪気なのか、それともわざとそう振る舞っているのか。
スマホを見ると、誰からも連絡がなく、ほっと胸をなでおろした。
「あからさまに安心しなくても。笙司さんは今頃、他の女と会っているだろうし」
知っている。
私と婚約しながら、笙司さんは自分が経営するイタリアンレストランで働く女性と以前から付き合っていた。
笙司さんが、まだ会社を立ち上げる前からのパートナーで、一途に笙司さんのために尽くしている。
「小百里はわざとそういう男を章江さんが小百里の婚約者に選んだんだってわかっているよね? 清加さんと同じ目にあわせるために」
「ええ……」
笙司さんに付き合っている女の人がいることに気づいていながら、章江さんは私の婚約を父に勧めた。
「なにを言ってるの」
「そのうちわかる」
目を細め、笑う知久はなにを企んでいるのだろうか。
それが良からぬことであることは間違いないのだけど。
チェーンから指を抜き、知久はついばむように私の唇にキスをする。
「そうだ。スマホの電源、小百里のも入れておくよ」
「切ってあったの?」
「そーだよ。邪魔されたくないし」
無邪気なのか、それともわざとそう振る舞っているのか。
スマホを見ると、誰からも連絡がなく、ほっと胸をなでおろした。
「あからさまに安心しなくても。笙司さんは今頃、他の女と会っているだろうし」
知っている。
私と婚約しながら、笙司さんは自分が経営するイタリアンレストランで働く女性と以前から付き合っていた。
笙司さんが、まだ会社を立ち上げる前からのパートナーで、一途に笙司さんのために尽くしている。
「小百里はわざとそういう男を章江さんが小百里の婚約者に選んだんだってわかっているよね? 清加さんと同じ目にあわせるために」
「ええ……」
笙司さんに付き合っている女の人がいることに気づいていながら、章江さんは私の婚約を父に勧めた。