私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
11 異母弟
―――冬が過ぎ、桜の花が散り、知久達が帰ってきて二年目の春も終わろうとしていた。
知久達のクラシック界のプリンス呼びは健在で、コンサートや雑誌の仕事も以前より増えている。
忙しくしていて、あれ以来、顔を合せたのは数える程度で、滅多に会うことはなかった。
最近は唯冬達は作曲まで始め、楽曲の提供までしている。
そんな仕事ぶりを見て、寂しいというより、どちらかというと。
「稼ぐだけ稼いでるのは渋木や陣川の血のせいなのかしらね」
血筋を感じていた。
父も忙しい人で、滅多に家にいない。
あの広い家に一人いるのは清加さんだけ。
お嬢様育ちで苦痛ではないのだろうけど、私には息苦しかった。
お手伝いさんがいて、家の隅々まで手入れされて綺麗で、食事も完璧で、どこからどうみても理想の家と家族たち。
ドラマの映像のように眺めていたいと思うほどなのに。