私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「おかえり。小百里。これ、小百里の弟君の仕業だからね……?」
キッチン担当の穂風が飲み終えたコーヒーカップを手にしている。
お客様ではなく、このピアノを運びいれた人にコーヒーを出したらしい。
疲れた表情をしている穂風を見て、穂風がやったことでないと、すぐにわかった。
犯人は―――
「ああ。小百里。やっと来たか」
私の異母弟である唯冬が優雅にコーヒーを飲んでいた。
そのカウンターの一角だけ、ヨーロッパの風景に見えたのは私の気のせいだろうか。
色白で、色素の薄い髪と瞳、人形のように温度のない顔。
幼い頃はよく女の子に間違えられていた。
昔は病弱だった唯冬も、今では身長も伸び、体も丈夫になった。
だから、私は容赦なんてしない。
「ちゃんと姉さんと呼びなさい。このピアノ、どうしたの? 本物のスタインウェイよね?」
「そう。姉さんにお願いがあって」
出た―――唯冬のお願い。
いつもは呼び捨てで、小百里と呼ぶくせに頼みたいことがある時だけ上手に弟ぶる。
「俺がそのピアノを買ったんだ」
「それはわかるわ。買わないとここにはないものね。でも、どうして?」
唯冬が住んでいるマンションにもピアノがあることを私は知っていた。
なぜ、ここにも必要だったのだろうか。
キッチン担当の穂風が飲み終えたコーヒーカップを手にしている。
お客様ではなく、このピアノを運びいれた人にコーヒーを出したらしい。
疲れた表情をしている穂風を見て、穂風がやったことでないと、すぐにわかった。
犯人は―――
「ああ。小百里。やっと来たか」
私の異母弟である唯冬が優雅にコーヒーを飲んでいた。
そのカウンターの一角だけ、ヨーロッパの風景に見えたのは私の気のせいだろうか。
色白で、色素の薄い髪と瞳、人形のように温度のない顔。
幼い頃はよく女の子に間違えられていた。
昔は病弱だった唯冬も、今では身長も伸び、体も丈夫になった。
だから、私は容赦なんてしない。
「ちゃんと姉さんと呼びなさい。このピアノ、どうしたの? 本物のスタインウェイよね?」
「そう。姉さんにお願いがあって」
出た―――唯冬のお願い。
いつもは呼び捨てで、小百里と呼ぶくせに頼みたいことがある時だけ上手に弟ぶる。
「俺がそのピアノを買ったんだ」
「それはわかるわ。買わないとここにはないものね。でも、どうして?」
唯冬が住んでいるマンションにもピアノがあることを私は知っていた。
なぜ、ここにも必要だったのだろうか。