私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
15 君を想う曲
梅雨に入る少し前、クラシック音楽界のプリンスなんて呼ばれる三人組が、カフェ『音の葉』にやって来た。
三人はディナータイムを狙って来たとしか思えない。
ハーブの花が咲く庭を三人は小学生男子のように歩いている。
「今から、閉店の札に変えられないわよね……」
嫌な予感しかない。
レモンが入ったミネラルウォーターのガラスピッチャーを手にその三人組を眺めた。
「小百里さーん! お店を手伝いに来たよー!」
先頭をきって、お店のドアを開けたのは知久だった。
手伝い?
邪魔しに来たの間違いじゃなくて?
この時、私と穂風は微妙な顔をしていたと思う。
たとえ、三人がクラシック音楽界のプリンスと呼ばれていたとしても、私には悪ガキ三人組にしか見えない。
バイオリニストの知久、ピアニストの唯冬、チェリストの逢生君。
三人がアイドルさながらの人気なのは知っている。