私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
この関係が終わるのは、まだずっと先だと思っていた。
それは私の思い違いで、すでに世界が私を閉じ込めようと籠を用意していたことも知らずに。

「おかえりなさいませ、小百里お嬢様。旦那様からお嬢様が帰ってきたら、呼ぶようにと言われております」

家に帰るとお客様がいたことにも驚いたけど、父がこんな早い時間に帰宅していることにも驚いた。
嫌な予感がした。
父が家にいる時は私にとって、いつも、なにか大きな変化がある。

「失礼します」

そう言って、応接間に入るとそこにいたのは父と伯母の章江さん、そして、スーツを着た男の人だった。
見た目からして、私よりいくつも上であることはすぐにわかった。

「ああ、小百里。帰ってきたか」

「ただいま帰りました……」

機嫌のいい父と伯母。
作り笑いを浮かべる男の人は私をじろじろと見ている。
私が警戒して、難しい表情を浮かべていると、章江さんが意地悪く笑った。

「この方は私が通っているお琴の先生の息子さんでね、瀬登(せと)笙司(そうじ)さんとおっしゃるの」

「こんにちは、小百里さん」

「……はじめまして」

「将来有望で素敵な方でしょ? 小百里さんにぴったりな方だと思わなくて?」

「なんのことでしょう」

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