私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
私の激励の言葉に返事はなく、波音が繰り返し聞こえるだけだった。
私と知久の間に長い沈黙があった。
私はなにも感じないように心を殺し、ただ海を眺めていた。
まだ冷たい春の海に来ることになったのはなぜなのか、ぼんやりと考えていた。
海に行こうと言ったのは知久で、海が見たいと言ったのは私だった。
沈黙の後、知久が言った。
「俺は小百里と別れない。別れないために俺は留学することを決めた」
いつもとは違う真剣な声に私はうつむいた。
真剣であればあるほど、傷つけてしまう。
「小百里。俺が戻るまで待っていてほしい」
隣に立つ知久を見上げると、その目は海じゃなく私を見ていた。
「小百里はここで終わりにするだろうなって思ってたけど、そんなことさせない」
「知久には将来が……」
言いかけた言葉を遮るように知久は唇を重ねて、私の声を消した。
「簡単に終われるって思っているのは小百里だけだよ?」
いつもの悪魔みたいな笑みを浮かべていた。
別れを肯定されないための言葉を知久は探していたのかもしれない。
「ドイツに行っても連絡するし、休みには帰ってくる」
私の髪を自分の指に絡めた。
私を逃げられなくするためなのか、知久が離れられなくするためなのか。
私と知久の間に長い沈黙があった。
私はなにも感じないように心を殺し、ただ海を眺めていた。
まだ冷たい春の海に来ることになったのはなぜなのか、ぼんやりと考えていた。
海に行こうと言ったのは知久で、海が見たいと言ったのは私だった。
沈黙の後、知久が言った。
「俺は小百里と別れない。別れないために俺は留学することを決めた」
いつもとは違う真剣な声に私はうつむいた。
真剣であればあるほど、傷つけてしまう。
「小百里。俺が戻るまで待っていてほしい」
隣に立つ知久を見上げると、その目は海じゃなく私を見ていた。
「小百里はここで終わりにするだろうなって思ってたけど、そんなことさせない」
「知久には将来が……」
言いかけた言葉を遮るように知久は唇を重ねて、私の声を消した。
「簡単に終われるって思っているのは小百里だけだよ?」
いつもの悪魔みたいな笑みを浮かべていた。
別れを肯定されないための言葉を知久は探していたのかもしれない。
「ドイツに行っても連絡するし、休みには帰ってくる」
私の髪を自分の指に絡めた。
私を逃げられなくするためなのか、知久が離れられなくするためなのか。