私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】

頭がおかしくなる。
お互いの熱い息がかかり、涙がこぼれた。

「小百里」

涙にキスをし、汗で湿った知久の肌を感じた。
それは、お互い涙だったのかもしれない。
汗をにじませ、こらえる知久の体にしがみついた。
もっと欲しい。
あなたの感触が。

「知久っ……」

「好きだよ。小百里……」

「……私もよ」

最初で最後になるかもしれない。
私の本当の言葉をあなたに。

「知ってるよ」

その返事の声は高ぶった感情で震えていた。
私を抱き締めて何度も体にキスをして服を脱ぐ。
バイオリンを弾くからか、腕は思ったよりも筋肉質で、体を引き寄せた手はもう男の人の手だった。

「小百里。ありがとう。一生大事にするよ」

それはプロポーズの言葉だった。
けど、一生なんてことは絶対に無理だと私は思っていた。
思っていたのに泣きながら、知久の言葉を受け入れていた。

「一生そばにいて、知久」

「いいよ、小百里を全部俺にくれるなら」

体も心も―――魂もすべて。

「全部あげる。知久に」

今なら、言っても許される。
そうでしょう?
その言葉に知久は幸せそうに微笑んで体を深く抱いた。
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