第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している

第4部 勝利と帰還

翌朝、目を覚ますと――アシュレイの姿はなかった。

隣にいたはずの温もりは消え、代わりに静寂が広がっていた。

(あの夜は……夢?)

そんな不安がよぎったその時、テントの布が揺れた。

「……リリアーナ。」

兄・ダリウスが入ってくる。私は慌てて胸元を押さえた。

「っ……!」

「……ああ、いい。殿下が“ゆっくり休め”と仰せだった。」

そう言って兄は、あえて視線を外してくれた。

恥ずかしさと、胸の奥のじんわりとした余韻に、私は俯く。

――アシュレイは、もう戦場に立っている。

「……すぐに、準備します。」

急いで服を羽織ると、兄の声がふと低くなった。

「……抱かれたのか?」

言葉が喉に詰まり、私は何も答えられなかった。

兄はしばらく沈黙し、それから呟く。

「戦の前の晩、女は……禁忌なんだぞ?」

「……ああ……」

その声には、叱責ではなく、ただ静かな心配と、理解が滲んでいた。
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