第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している
宮殿に帰ると、そこは祝賀の空気に包まれていた。

鼓笛が鳴り、人々の笑顔が溢れる。

それぞれの騎士たちが、妻や子ども、家族に出迎えられていた。

(……いいな。)

心の奥で、そんな感情がぽつりと浮かぶ。

私はただ剣を抱え、静かに佇んでいた。

その時――

「リリアーナ。」

聞き慣れた声に振り返ると、アシュレイが歩み寄ってきていた。

「これからも――」

言葉の続きを告げようとしたその瞬間だった。

「アシュレイ!」

カトリーナ妃が駆け寄り、彼にしがみついた。

「よくぞ、ご無事で!」

「……ああ。」

彼は応える。けれど――彼女を抱きしめる腕は、なかった。

それでも、彼女は“妃”だった。

この人の、正式な伴侶。

私は何も言わず、静かに背を向けた。

その背中に、戦の記憶がじんわりと冷えていく。

――私は、ただの騎士。

この宮殿では、私の居場所は……ないのかもしれない。
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