第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している
「……浮気でもしたの?」

その一言に、私は物陰で体を硬くした。

呼吸が止まる。まさか、この話は――

「……ああ。他の女を、抱いた。もう、君の夫である資格は……ない。」

正直な告白。それは、胸を張って言えるものではない。

でも、嘘ではなかった。

するとカトリーナ妃は、静かにアシュレイの服に手をかけた。

「浮気くらい、何よ。戦地ではそんなの当たり前じゃない。」

彼女は微笑みながら、彼の上着を滑らせる。

「でもその女、遊び女でしょう? どうせ一時の慰めでしょ。」

その言葉に、私は心臓を掴まれたような衝撃を受ける。

――遊び女?

アシュレイは小さく、でもはっきりと首を横に振った。

「……ううん、違う。リリアーナは……違う。」

その声が、胸の奥に静かに、深く落ちていった。

「……リリアーナ?」

アシュレイが私の名をつぶやいたその瞬間、カトリーナ妃が不気味な笑みを浮かべた。
< 40 / 103 >

この作品をシェア

pagetop