第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している
「忘れて。その名も、その想いも。あなたには私と子を成す義務があるのよ。」

その言葉はまるで呪いのように響いた。

そして――

アシュレイは、カトリーナの手に導かれるように身体を預けていった。

「うっ……ああ……」

漏れ聞こえるアシュレイの声。

艶めかしく響くその声に、私の胸が締めつけられた。

「私の中で……欲望を満たしなさい。」

「う……あああっ。」

その声が、まるで苦痛の叫びのように聞こえて――

私はもう、それ以上見ていられなかった。

(そうよ……二人は夫婦。夜を共にするのは、当たり前。)

でも。
でも、アシュレイの声は甘いものではなかった。

苦しみと、怒りと、諦めと。

私に届かないその声が、私の中で叫び続けていた。

私は静かに、その場を去った。

涙ではなく、心の奥が……ゆっくりと、崩れていった。
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