第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している
「早々に、次の嫁ぎ先が決まりました。」

カトリーナ妃は、どこか他人事のように言った。

「えっ……」

私の声に、彼女はわずかに口元を歪める。

「ブラウン伯爵の元へ。年も随分と上で……爵位も、私の家より下よ。」

アシュレイは目を伏せたまま、小さく息を吐く。

「そうか。」

その一言の後、しばらく沈黙が落ちた。

「今度は、幸せになってほしい。」

その言葉に、カトリーナは初めて驚いたような表情を見せる。

「……アシュレイ。」

「俺が……一度は、心から愛した人だから。」

そう言って、アシュレイは彼女の手をそっと取り、その甲に優しく口づけた。

二人の間に言葉はもうなかった。

別れのキスは情ではなく、惜別と祈りの証。

そしてそれを最後に、ふたりはもう振り返ることなく、それぞれの道を歩み始めた。
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