第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している

第10部 新しい命と未来

私たちが結婚して、三か月が過ぎたある日。

宮廷に悲しい知らせが駆け巡った。

「えっ……⁉ 皇太子殿下が、病で倒れたの?」

私は声を上げ、アシュレイの顔を見た。

彼はただ黙って頷いたが、その表情には明らかに悲しみと動揺が滲んでいた。

「エドワルド兄は……もう長くはもたないかもしれない。」

「そんな……」

皇太子殿下、エドワルド様は病弱ながらも誠実なお人柄で、民にも臣下にも慕われていた。

誰よりも国を愛し、責務を果たそうとしてきた方だ。

「兄上には子供がいない。」

ぽつりとアシュレイが呟いた。

伏せたままの瞳が、どこか遠くを見ているようで、私はそっと彼の手を握った。

「次の皇太子は、セシル兄が継ぐと思う。」

その名に、私は小さく頷いた。

文官として内政に長けた方――静かで温厚な眼鏡の青年が脳裏に浮かぶ。

「それはそれで、教養豊かな国になりそうね。」
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