あなたがいてくれるから
第一夜☪ 恋の始まり
「はじめまして〜あ、やっぱ、お取り込み中?俺、入ってもいい感じ?」
─その日、1人部屋は1人部屋では無くなった。
「あ、すぐに出ていくから気にしないで〜あ、可愛いですね、センパイ」
にこにこ笑っていて、気持ち悪いやつ。
男か女か一瞬、疑った黒く長い髪の男は、俺の上に跨る女を見て、優しく微笑んだ。
「お互いに気まずいだろうし、終わったら連絡して〜」
そう言って、メモ用紙と荷物を置いていった男─ああ、そうだ。転入生だ。
先日、教師に言われた、同じクラスの転入生。
「誰〜?格好良かった〜」
「え、向こうが好みなの?」
「えぇ、嫉妬してるの〜可愛い〜」
─馬鹿な女。頭が空っぽで、快楽のみの相手。
でも、これくらいが丁度いい。
『りっくんはっ、お母さんを置いていかないよねっ……置いてかないで……お願いっ』
─どうせ、こいつらは“俺”を見ていない。
ステータスと、顔だけだ。
だから、本当にどうでもいい。
友情とか、愛情とか、そんなのはどうでもいいから、放っておいてくれ。
「またね〜」
女を見送って、放り投げていたスマホを手に取る。メモ用紙に残っていた番号を打ち込んで、電話をかけようとして……止める。
(─馬鹿馬鹿しい。そのうち、帰ってくるだろ)
変な奴だった。
俺が使っていたベットの反対側にある、綺麗に調えられたベットの上にブレザーとカバンを投げ捨てると、そのまま何食わぬ顔で出ていく後ろ姿。