あなたがいてくれるから
「名家には、名家なりの悩みがあるんだな」
「いや、この場合、ちょっとシフトチェンジしただけで、実際は変わらんよ。端的に言えば、妹を虐めようとしていた同級生をフルボッコにして、そのフルボッコにされた同級生の親に、俺が謝っている……みたいな感じで、いつも考えてる」
ポットのスイッチを入れ、カップを取り出す。
「そんなことの繰り返しよ、俺ら」
「意外と、亜希は好戦的だな」
「そうだぞ〜幼なじみ、俺達たくさんいるけど、一番好戦的なのは亜希だな。一番性格悪いのは、杜希だけど」
「……杜希?」
「おう」
「性格悪いの?優しそうだけど」
「ばっか、お前、そんなん見かけだけだ。この間、俺が張り倒されてたの、見ただろ」
「あれは、誉が悪いんじゃ─……」
「そうだな!俺が全面的に悪いな!」
珈琲の良い匂いが部屋に広がり、適当に服を選ぶ。
「あとで、俺も服買おうかな〜」
「良いんじゃない?というか、買い物行くの?」
「行くよ。杜希も行くって」
そう言いながら、メールを見せる。
「ふうん……え、男だけで何するの」
「飯食ったり、ゲーセン行ったり、映画見たり、服見たり……?」
「普通だね。名家なら、外商とか言うかと」
「言わねぇよ」
─咄嗟に否定したが、ないこともない我が家。
(父さんがな〜!)
にっこにこで、母さんに服やジュエリーを当てる姿、もう何回見ただろう。
「普通に店で着て、買うのが好き」
「ふーん?」
「あ、俺達兄妹は、だけどな」
「他の幼なじみは違うの?」
「うん。─まぁ、今度紹介するよ」
誉が出来るのは、外堀を埋めることくらい……そう思いながら、微笑んだら。
「なんか、嫌な予感がすんだけど」
と、何故か引かれた。