あなたがいてくれるから
転入生
「─今日からここでお世話になります。花泉誉(ハナイズミ ホマレ)です。よろしく!」
「……」
フラッ、と、二限から来ると、丁度、ホームルーム中で、昨日帰ってこなかった、(恐らく)同室(で決定した)男が自己紹介していた。
「やば、かっこよくない?」
「え、うちのクラス、ヤバいよね」
「天宮もいるのに?」
「ヤバすぎ、ウケる〜」
ザワつくクラスに、(来なければよかったな〜)とか思いながら、窓際の1番後ろの席に座る。
もう、担任も今更注意などしてこないし……と思いながら机に突っ伏すと。
「あ、せんせー!俺、ここがいい!」
突然、横の席に来た奴は言い放った。
「お〜」
担任も担任で、適当に返事しやがる。
「は?他空いてんだから、そこでいいだろ」
思わず口を挟めば、こちらを挑発するように笑いながら、奴は言った。
「えっ、でも、お前の横って競争率が高そうじゃん?つか高くて、空いてたんじゃねぇの?じゃあ、俺で良くね?─な、杜希♪」
「……静かにしてくれるなら、どうでもいい」
奴に話しかけられて、目の前の男がため息混じりにそう言うと、その横の女も無言で頷く。
「わかったわかった。相変わらず、静かだな。お前らは」
「誉がうるさすぎるんだよ。あまり酷いと、言いつけるからね」
「へーへー」
目の前の男─四条杜希(シジョウ トキ)はそう言いながら、担任に。
「先生、こいつは僕たちが管理します」
「大丈夫か?」
「大丈夫です。な、亜希(アキ)」
「扱うのは慣れてます」
「そりゃ助かる」
─勝手に話が進みやがる。
この席になった時は前ふたりが全く話しかけてもこないタイプだったから、気が休まってラッキーと思っていたのに、奴が横に来たら、そんな平和も脆く崩れ去る。
既に勝手に他の空いてる席から机と椅子を運んできた奴は、
「よろしくなぁ、凛空(リク)」
呼ぶことを許可してない名前を呼んで、
「俺のことは、誉でいいぞ〜」
とか言い出す。