あなたがいてくれるから
「─可愛いだろ、葵咲」
いきなり肩に感じた重み。
振り返ると、そこにはニカッと、笑う花泉誉。
「おまっ、なんで」
「え〜?飲み物買いに行くことを口実に、抜け出してきた☆あんま囲まれるの、好きじゃねぇのよ」
「……」
そう言いながら、奴は紙パックのりんごジュースを買い、飲み始める。
「いや、今、彼女が」
「ん?葵咲?」
「お前のお使いって……」
「…………ああ!忘れてた☆」
少し間を置いて、奴はスマホを取り出す。
「ゲッ、大人しく取りに行こ……」
何か届いていたのか、奴は顔を顰める。
「凛空、一緒に行かね?」
「は?」
「ねぇ、ダメ?怒ると怖いのよ、あいつ」
「自業自得だろ」
─何が悲しくて、奴と彼女をセットで見なくちゃならないんだ。
「そっか〜残念」
奴はそう言うと、彼女の向かった方へと消えてく。
「…………勘違いをするな」
自分に言い聞かせるように呟いて、
「彼女に、他意はないんだから」
凛空はサボる為に、彼女からのミルクティーを手に屋上へ向かった。