あなたがいてくれるから




「─可愛いだろ、葵咲」

いきなり肩に感じた重み。
振り返ると、そこにはニカッと、笑う花泉誉。

「おまっ、なんで」

「え〜?飲み物買いに行くことを口実に、抜け出してきた☆あんま囲まれるの、好きじゃねぇのよ」

「……」

そう言いながら、奴は紙パックのりんごジュースを買い、飲み始める。

「いや、今、彼女が」

「ん?葵咲?」

「お前のお使いって……」

「…………ああ!忘れてた☆」

少し間を置いて、奴はスマホを取り出す。

「ゲッ、大人しく取りに行こ……」

何か届いていたのか、奴は顔を顰める。

「凛空、一緒に行かね?」

「は?」

「ねぇ、ダメ?怒ると怖いのよ、あいつ」

「自業自得だろ」

─何が悲しくて、奴と彼女をセットで見なくちゃならないんだ。

「そっか〜残念」

奴はそう言うと、彼女の向かった方へと消えてく。

「…………勘違いをするな」

自分に言い聞かせるように呟いて、

「彼女に、他意はないんだから」

凛空はサボる為に、彼女からのミルクティーを手に屋上へ向かった。



< 7 / 38 >

この作品をシェア

pagetop