彼は高嶺のヤンキー様11(元ヤン)
そこから先は行動が早かった。
涙をぬぐって顔を上げる。
クローゼットを開けて、中学時代の修学旅行のカバンを引っ張り出す。
そして、あゆみが丘学園の制服をカバンにつめる。
今の制服だけじゃなく、クリーニングに出して持って帰っていた夏服もカバンの中へ。
勉強机に並べていた教科書とタブレット一式、それから体操服と、学校で使う勉強道具もカバンに入れる。
それから、引き出しのお菓子の箱に入れていた全財産をカバンに入れる。
他に必要なものはない。
ただ、動きやすい服装に着替えたかったので、今着ている制服を脱ぎ捨てて、地味なジャージに着替える。
脱ぎ捨てた制服は後で洗濯するので、手ごろな袋に詰めて、こちらもカバンの中におさめた。
(よし、準備完了。・・・もうここに用はない。)
部屋を1回見渡した後で、修学旅行のカバンを肩にかける。
キィイ・・・。
そーと、部屋のドアを開ければ―――――――
「お前が悪いんだ!凛を見ていなかったから!」
「だったら、専業主婦させるぐらい稼いで来なさいよ!」
両親が罵り合う声がした。
数年ぶりに聞いたが、あの様子ではあと1時間はケンカは続くだろう。
私は音をたてないように階段を下りて、玄関まで行く。
学校へはいていく用の靴を履き、予備で置いている学校へ行く用のもう1足の靴も、素早くカバンの中に入れた。
そして、チェーンロックを外し、鍵を開けて外へ出た。
これで私は自由だ!
(瑞希お兄ちゃんの元へ行ける!)
カシャカシャ!!
「え!?」
「おい、今出てきた子、菅原凛じゃないか!?」
「ラッキー!出待ちしてた甲斐があった!」
「大きなカバン抱えてるってことは、これからどこかに逃げる予定ですかー!?」
「・・・・・・え・・・・・・・?」
そう口々に言うのは、私にスマホやカメラを向けてくる知らない人達。
「はーい!デンノスケチャンネルです!たった今、話題の悪女・菅原凛の自宅に突撃したところ、ご本人登場しました!ちょっとインタビューしてみまーす!」
その言葉で、最悪の事態を私は理解する。