この結婚はビジネスのはずでしたが、御曹司が本気で愛してきます
ひと口かじると、とろけるような甘さが広がって――

なんだか、ほっとする。

「……美味しい。」

思わず笑みがこぼれた。

すると、彼がふっと柔らかく笑って言った。

「その顔が見たいんだ。」

ドキッとした。

さりげない言葉なのに、心臓が跳ねたように感じた。

……いつの間にか、この人は、私の“普通の顔”まで気にしてくれているんだ。

誰にも言われなかった。

私の笑顔を「見たい」と思ってくれる人なんて――ずっと、いなかった。

それだけのことなのに、胸の奥が少し熱くなった。

そして翌日も、彼は私の部屋を訪れた。

けれど、今日はなぜか、玄関のドア越しからふわりと甘い香りがした。

ドアを開けると、そこには花束を持った奏が立っていた。

「これ、君に。」

驚いて目を瞬かせる私に、彼は当たり前のようにそれを差し出してきた。
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