この結婚はビジネスのはずでしたが、御曹司が本気で愛してきます
「今日はこれで失礼しよう。」

玄関先でそう言われたとき、私は思わず声を漏らした。

「えっ……」

だって、来てからまだ十分も経っていない。

もっと話せたのに。もう少し、この人の声を聞いていたかったのに。

でも奏は、私の表情に気づかないふりをして笑った。

「じゃあまた、明日。」

そう言い残して、あっさり帰っていった。

そして本当に、翌日もまたやってきた。

「今日は、お土産買ってきた。」

手渡された小さな紙袋の中には、見覚えのあるパッケージ。

人気のシュークリーム店のロゴがついていた。

「あの……」

言いかけた言葉を、うまく続けられなかった。

嬉しい。でも、どう受け取ればいいのか分からない。

「口に合わない?」

彼が少し首をかしげて、私の反応を探る。

「い、いえっ……そんなことないです!」

慌てて答えた。

袋を開けて、一つ取り出す。
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