この結婚はビジネスのはずでしたが、御曹司が本気で愛してきます
「痛い?」

彼の声がすぐに響いた。

その声に込められた心配とやさしさが、心に沁みる。

「奥には、入れないから。大丈夫。」

奏が、私の体を気遣いながら動きを止める。

その瞬間、彼が自分を抑えているのが分かった。

痛みよりも、彼のその我慢が――胸に迫った。

「……優しいのね。」

私は、彼の頬にそっと触れた。

肌に触れた彼の熱が、私の指を伝って心まで溶かしていく。

奏は、私の手を取って、静かに囁いた。

「君が……俺を選んでくれたから。だから、大切にしたい。」

その言葉が、胸の奥に優しく灯った。

契約のはずだったこの関係に、確かに“想い”が芽生え始めている。

「ああ……っ」

息が漏れる。

熱が、体の奥でじわじわと広がっていく。

「結衣……俺を、受け入れて。」

奏の声が低く響いて、心の奥をかき乱す。
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