全部、俺のものになるまで

【6】その夜、課長が豹変した

その日は、会社の飲み会だった。

「お先します。」

「おー、お疲れ様。」

同僚たちに見送られながら、ふらついた足で店を出た。

酔った私に付き合ってくれていたのは、瀬戸課長――

一回り年上の、穏やかで真面目な上司。

社内では“イケオジ候補”なんて密かに呼ばれている人。その彼が、今、私の隣にいる。

「大丈夫か?羽鳥」

覗き込まれた顔。酔いとともに、心臓が跳ねる。

「だ、大丈夫ですよぉ。」

そう答えながらも、脚は思うように動かない。

すると瀬戸課長は、そっと私の腕を取って支えてくれた。その手が、優しくて、熱い。

──こんな風に触れられるの、初めてかもしれない。

ただの上司だったはずなのに、なぜか今夜は、少しだけ“男の人”に見えた。
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