全部、俺のものになるまで
今年の誕生日は、和臣さんが予約してくれたレストランで過ごした。

テーブルの上には小さな花束と、きらめくキャンドル。

「ふふ。久しぶりだね、こういうの。」

私が嬉しそうに笑うと、和臣さんも微笑んだ。

その時だった。

「心音。」

そう言って、彼は小さなベルベットの箱を取り出し、私の前にそっと差し出した。

「……指輪?」

胸が高鳴る。

箱を開けると、中にはシンプルで美しいリングが輝いていた。

「俺と結婚してください。」

和臣さんの声が、胸の奥にしみ込んでくる。

「えっ……」

驚きと嬉しさで、言葉にならない。

私は口元を押さえ、頷いた。

「はい……」

涙が、ぽろぽろとこぼれた。

この恋をずっと胸の奥に隠していた頃、こんな日が来るなんて思ってもいなかった。

家族という仮面を脱いで、本当のふたりになれた――

その瞬間が、確かに今、目の前にあった。
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