全部、俺のものになるまで
気づけば、二人で終電を逃していた。

「おまえ、終電覚えてろよ。」

「課長だって、逃してるじゃないですか。」

「俺は、おまえに付き添ったんだぞ?」

からかうような言葉に、思わず笑ってしまう。

でも、真面目な瀬戸課長が、こんなふうに砕けた口調で話すと、胸の奥が妙にざわついた。

「タクシー、呼ぶから。」

そう言って、スマホを操作する課長。その手際の良さにも、少し見惚れる。

ほどなく一台のタクシーが到着し、「ほら、乗れ。」と肩を軽く押される。

「ほえ?」

流されるように乗り込むと、すぐ隣に課長も乗ってきた。密室。

肩が触れそうな距離。ふわりと香る大人の匂いに、胸の鼓動が一気に早くなる。

──私、今、瀬戸課長と二人きりなんだ。

それだけのことなのに、どうしてこんなに意識してしまうんだろう。
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