全部、俺のものになるまで

【2】恋人のふりは、ベッドの上で破られる

私、**月島 瑠奈(つきしま るな)**は、ここ最近ずっと怯えている。

会社の帰り道、背後に感じる視線。

エレベーターで降りたあとも、足音がついてくる気がする。

自宅のカーテンを開けるのも、怖くなった。

窓の外に、誰かが立っているような気さえするのだ。

「……また今日も、誰かが……」

そんな不安をかき消すようにシャワーを浴びて、何もなかったように出勤する。

でも、体はどんどん削られていった。

ある日、フロアで資料を並べていたときのことだった。

「……顔色が悪いぞ。」

ふとした瞬間、背後から声をかけられる。

振り返ると、相馬課長が眉をひそめて私を見ていた。

「無理してないか? 相談なら乗るよ。」

その真っ直ぐな眼差しに、一瞬だけ胸が温かくなる。

──でも。

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」

私は首を横に振って、笑顔を作った。
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