全部、俺のものになるまで
まさか、上司に「ストーカー被害に遭ってる」なんて言えるはずがない。

きっと、「気のせいじゃないか」と言われて終わる。

警察に行っても証拠がなければ何もしてもらえないのに、社内の人間に話して何になるというのだろう。

だから私は、また今日も黙って笑う。

怖さを押し殺して、何事もないように。

そして、その“事件”は突然起きた。

昼休み、ひとりで外へ出て軽く昼食を済ませ、ビルに戻ってきたときのことだった。

廊下を歩いていると、背後で足音が響く。

コツ、コツ、と規則正しく──でも、どこか不気味な音。

まさか……ね。

自分に言い聞かせるように歩くスピードを速めた。

でも、その足音もぴたりと私のペースに合わせてついてくる。

まるで、背中に貼りついてくるような気配。

「……瑠奈ちゃん、やっと会えたね」

「えっ……?」

背筋が凍った。
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