全部、俺のものになるまで
振り返ると、そこにいたのは──

何度も感じた“あの視線”とまったく同じ、男の顔だった。

「探したよ、俺の天使。」

笑っているのに、目が笑っていない。

狂気すら感じるその視線に、体がすくむ。

次の瞬間──男の手が、私の腕をぐっと掴んだ。

「や、やめてくださいっ!」

「誰も来ないよ。こんな時間に、人なんて通らないから。」

力が強くて、振りほどけない。

声を上げようにも、喉が凍りついて声が出ない。

──誰か、助けて。

必死に願った、そのとき。

「……離れろ。」

低く鋭い声が、廊下に響いた。

振り返ると、そこには――相馬課長がいた。

「……なんだ、お前?」

ストーカーの男が、鋭く声を荒げる。

「その子の上司だ。」

相馬課長の声は静かで低い。けれど、その圧には揺るぎがない。

だが──ストーカーは一歩も引かない。

「悪いね。これから瑠奈ちゃんと、お話するんだ。」

「だったら、無理やりじゃなくてもいいだろう。」

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