全部、俺のものになるまで
カーテンを閉めようと、手を伸ばした瞬間だった。

窓の向こうに、人影が見えた。傘も差さずにずぶ濡れの青年——陽翔くん。

「陽翔くん!」

私は驚いて窓を開け、思わずその名前を呼んでいた。

彼はじっと私を見つめていた。目を逸らさずに。

「もう一度だけ、俺に会ってください。」

その言葉が胸に突き刺さる。

私は何も言えず、窓を閉め、急いで玄関へと走った。

マンションのエントランスを出ると、外は本降りの雨。

「陽翔!」

声を上げ、私は慌てて傘を差し出した。

けれどその瞬間、彼の腕が私を引き寄せた。

「……っ」

冷たい雨の中、熱を帯びた体温が伝わってくる。

「どうしても……もう一度、会いたかった。」

私の心は、もう抗えなかった。

「家に行ってもいい?」

そう尋ねる陽翔君に、私はこくんと頷いた。

玄関に入り、濡れたコートを受け取る。指先が触れただけで、心臓が跳ねた。
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