全部、俺のものになるまで
意外だった。

あれほど強引に抱いてきたくせに、待っていたのは彼の方だったのかと。

私は黙って、最後の資料を棚に収めた。

静かに振り返り、目を逸らさずに告げる。

「でも──セックスだったんですよね。」

言葉に感情は込めなかった。

事実を並べるように、淡々と。

「抱いたとか、愛し合ったとか……そういうんじゃない。ただの身体」

社長の眉が、わずかに歪んだ。

その瞬間、彼は私の唇に触れてきた。

熱い、痛いほどのキスだった。

「君は、俺が抱いたあと──背中を向けた。」

唇が離れた瞬間、彼の声が低く落ちた。

「まるで……もう二度と俺に心を許さないって言ってるようだった」

彼の表情には、悔しさがにじんでいた。

男としての自尊心か、欲望か、それとも──それ以外の、もっと深い何かか。

私は答えられなかった。

言葉を探す間もなく、彼の腕がもう一度、私の腰を強く引き寄せた。
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