かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
「桜帆さんは———」
名を呼ばれてなぜかギクリとしてしまう。
「兄のどこが良かったんですか?」
「逆ですよ、それは」
うろたえながらも返す。
「透さんほどの人がなぜわたしみたいな平凡な女と結婚したのかと、みんな不思議がってます」
面と向かって「玉の輿だね」と言われたことさえある。
「あの兄貴が判断を誤るわけないんですよ」
形のいいくちびるをくいと歪めた。
「たしかに桜帆さんは頭のいい女性だ」
「ご冗談でしょう。わたしは量子コンピューターがどういうものかも理解できてないんですよ?」
「勉強ができても頭の悪いやつはたくさんいます。本質的な部分での賢さという意味です。相手の気持ちを汲みとれる、人を不快にさせないふるまいが自然にできる。モラリティの高さ…そういったところ」
首を短く横にふった。
「買いかぶりです」
「あやうく惚れそうです」
彼の目は笑っていなかった。
名を呼ばれてなぜかギクリとしてしまう。
「兄のどこが良かったんですか?」
「逆ですよ、それは」
うろたえながらも返す。
「透さんほどの人がなぜわたしみたいな平凡な女と結婚したのかと、みんな不思議がってます」
面と向かって「玉の輿だね」と言われたことさえある。
「あの兄貴が判断を誤るわけないんですよ」
形のいいくちびるをくいと歪めた。
「たしかに桜帆さんは頭のいい女性だ」
「ご冗談でしょう。わたしは量子コンピューターがどういうものかも理解できてないんですよ?」
「勉強ができても頭の悪いやつはたくさんいます。本質的な部分での賢さという意味です。相手の気持ちを汲みとれる、人を不快にさせないふるまいが自然にできる。モラリティの高さ…そういったところ」
首を短く横にふった。
「買いかぶりです」
「あやうく惚れそうです」
彼の目は笑っていなかった。