かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
カイロ着任は通訳に騙されて法外な家賃で事務所を契約させられそうになるところから始まった。
待遇に不満を持った従業員が事務所に怒鳴りこんでくることもしばしば。
不正を働いた従業員を追求したら「俺はもっと大きな不正ができたのにやらなかったのだ! You should thank me(感謝しろよ)!」と逆ギレ。

そんなエピソードに笑い転げながら、これを笑って話せるティムの人間力とでもいうべきものに感動すらおぼえた。

ティムの陽気な人柄と、イタリアンレストランの気取らない雰囲気も相まって、わたしたちのテーブルは終始笑いに包まれていた。

シチリア料理が売りの店で、魚介を使ってくれるのがまた嬉しいところだった。
松の実が香ばしいパスタ・コン・サルデ(鰯のパスタ)の次はイカスミのリングイーネ。みんなで仲良く口を真っ黒にしながら平らげた。
日本には昔お歯黒という風習があって、と透さんが話題に出すと、「Ohaguro?」とティムは興味深そうに耳を傾ける。

ワインがまた料理によく合って実に美味しいのだ。
わたしはワインには全く詳しくないけれど、どっしりしているのに後味が軽い白ワインがすいすいと進む。
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