かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
このポトフをメインに、副菜は味噌やごま油で味つけした数品で “和” を取り入れた。

はたして———祖母のポトフに、カナダ人ご夫婦は大感激だった。
「こんな美味しいポトフをいただくのは何十年ぶりかしら!」
その言葉がお世辞でない証拠に、二人とも「もう食べられない」と言いながら、何度もおかわりをしてくれた。

そのディナーの話題の中心は間違いなくポトフだった。
「こんな素晴らしい料理が毎日食べられるなんて、僕は君が羨ましいよ」とご主人が冗談まじりに透さんに言う。

日本人的な模範回答は「いつもはこうじゃないんですよ。お客様だから特別です」といったところだろうか。
そんな言葉を予想していたが、透さんは「ええ、妻は本当に料理が上手で、しかも日々上達しているんです」とストレートに口にした。


「———そんなところは透さんってアメリカっぽいのかしら」
トモミ先生に聞いてみる。

そうねえ、と彼女はにんまりする。のろけちゃって、という表情だ。

「日本人の慎み深いところやデリカシーのあるところは素敵だけど。いいところはやっぱり褒めないと。そのほうがやる気が出るし、嬉しいじゃない」

「確かに。次も頑張ろうって」
うんうんとうなずく。
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