かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
「そんなことできるの?」

「うちの社員も何人か、トモミさんのレッスンを受けている。彼女はうちの社員のヘルスケアに貢献してくれているわけだから、それくらいの便宜ははかるさ」

トモミ先生とノーマンはまだ三十代の夫婦だ。健康に自信がある世代はカバー範囲の広い保険に入っていないケースが多い。
まず彼らが加入している保険の種類が知りたいところだ、と透さんの思考はいつもながら明晰だ。

おかげで少しやるべきことが見えてきた。
「…人の家庭の懐事情を気にするなんて、日本じゃはしたないことだけどね」

「アメリカの医療費が高いのは誰でも知ってることだし、困ったときに助け合うのは当たり前だろ。桜帆も彼女にはずいぶん助けられたんじゃないか?」

それはもう、と力をこめてうなずく。

「ならその恩返しをするだけだ」

透さんがいうには、アメリカは移民の国であり、なかには政権の弾圧から逃れてきた人やその子孫も少なくない。
国に頼らず互助精神が強いこともあって、ボランティア活動が盛んだ。
人に助けを求めるのは恥ではないし、妙な遠慮をせずお互いにできることをやればいいのだと。

その話を聞いて、スタジオメンバーの行動力にも納得がいった。

さてそうなると、わたしにできることは何だろうか?
考えるのだ、桜帆。
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