推しに告白(嘘)されまして。
3.君の声 side悠里
side悠里
コートを半分に分け、練習試合前のアップをする両校。
その中でも一際目立つ存在は、俺たち鷹野高校バスケ部の部員から視線を奪っていた。
「…なぁ、あれってうちの華守だよな?」
「な、何で、華守学園に華守がいるんだ?」
「しかも普通に上手いし…」
アップを続けながらも、部員たちは、ちらちらと何度も何度も華守を見る。
それから時には見間違いではないかと、疑わしく、時には何故そこにいるのかと、不思議そうに首を傾げていた。
そして俺もまた他の部員たちと同じような視線を、華守に向けていた。
華守の格好はまさにバスケ上級者のそれで、特にシューズが初心者とは違った。
きちんと履き慣らされ、手入れされていることがわかるバッシュなのだ。
さらに格好通り、バスケをする姿は上級者そのもので、普通に上手かった。
まだ練習しているところしか見ていないが、それでも華守が華守学園内で一番の実力者だということはわかる。
華守学園バスケ部は、華守がいることで、実力が底上げされているように見えた。
今の華守学園はうちの地区では中堅どころだが、華守がいるだけで、上位に入れそうな雰囲気さえある。
練習を続ける華守から視線を外し、自分も練習に身を入れる為に、自分たちのコートへと視線を向ける。
ーーーー鉄崎さんにかっこいいところを見せたい。
改めて気合を入れていると、俺の足元に華守学園からバスケットボールが転がってきた。
俺は特に何も思わず、そのボールを拾う。
それからこちらに歩み寄ってきた人の気配に顔を上げた。
「先輩、こんにちは」
へらりとこちらに笑い、やって来たのは、何と今話題すぎる華守だった。
華守は笑っているのだが、目は鋭いままで俺を見ていた。
俺を殺したいほど、憎んでいる、と言われても何ら不思議に思わない鋭さだ。