推しに告白(嘘)されまして。




「先輩、俺、先輩の為に今日勝つから」



驚く私なんてよそに、千晴が普段通りの笑顔でそう言う。

な、何故、私の為に?
いや、それよりも切り替え早くない?
私、まだ千晴が華守学園出身のとんでもお金持ちって余韻が抜けてないんだけど?
マイペースすぎないか?



「わ、私の為に勝つって…。そもそも千晴、バスケできるの?うち強豪校だよ?」



いろいろと言いたいこともあるが、本人があの調子なので、一旦衝撃の事実には目をつぶり、私は千晴に問いかける。
驚きや疑問や呆れ、様々な感情を胸に千晴をまっすぐと見る。
すると、千晴は私と同じように私をまっすぐと見て、どこか自信ありげに微笑んだ。



「俺、これでもクラブでバスケしてた経験者だから。大丈夫だよ、先輩」



そこまで言って、千晴は一旦言葉を止める。
それからその綺麗な瞳に熱を帯びさせ、一度一階のコートに視線を向けてから、再びこちらを見た。



「俺のかっこいいところ見ててね。アイツじゃなくて、俺の」



ふわりと笑う千晴に私は苦笑いを浮かべる。
千晴の微笑みに周りの女の子たちは軽く悲鳴をあげていた。

全くどうなっているんだ。
何故、千晴は自分を見ろというのか。
ごめんけど、私は推しである沢村くんを見るぞ。



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