推しに告白(嘘)されまして。





「おい、悠里、大丈夫か?」



突然、俺に心配そうにそう声をかけてきた陽平によって、ぼんやりとしていた意識が鮮明になる。
俺と目の合った陽平は「やっと、こっち見た」と安堵した表情を浮かべた。



「お前ばかり頼りすぎてたツケが今来たな。気にすんなよ、悠里。お前がダメな時はこっちが頑張るから。先輩たちもそう言ってるぞ」



俺の背中を軽くポンと叩き、陽平がレギュラー陣である先輩に視線を向ける。
すると、先輩たちは、



「おう!気にすんなよ、エース!」

「お前が取れない分、俺らが取るぜ!」

「ここから巻き返しだ!」



と、明るく笑ってくれた。

何て優しくて頼もしい先輩たちなのだろうか。
陽平と先輩たちの暖かさに、自分の不甲斐なさを痛感するとともに、心が暖かくなる。



「ほら!鉄子もお前のこと応援しに来てるんだぞ!元気出して行こうぜ!悠里!」



それからいつの間にか俺のボトルを受け取っていた隆太が、ニカッと太陽のように笑い、おそらく鉄崎さんがいるであろう方へと視線を向けた。

…鉄崎さん。
隆太やみんなの視線の先には、鉄崎さんがいるのだろう。
俺は今日、鉄崎さんに〝かっこいい〟と思ってもらいたくて、この試合に誘った。

だが、それがどうだろう。
今の俺は誰がどう見てもかっこよくないし、情けない。
全てのシュートを外し、チームの足を引っ張るエースとは呼べない、チームのお荷物だ。

こんな姿、正直、鉄崎さんだけには見られたくなかった。



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