推しに告白(嘘)されまして。



*****



カップルコンテストの掲示板から離れた後、私たちは限られた時間を目一杯楽しんだ。

お化け屋敷は苦手なので入らなかったが、縁日に行って、ヨーヨー釣りをしたり、美術部の展示物を見たり。
クレープを食べたり、超大型迷路に行ったりと、とにかくさまざまな出し物を見て回った。



「面白かったね、悠里くん」



第二体育館の超大型迷路から出た私の第一声はこれだった。



「だね。ちょっと難しかったけど」

「うん。けど、ちょうどいい難易度じゃなかった?」

「確かに。あの選択するところとか、ちょっと凝っててよかったよね」

「うん、それ私も思った。あとその後の…」



先ほどまで楽しんでいた迷路の感想を笑顔で言い合いながらも、私たちは体育館の外を何となく歩く。

3年普通科の〝超大型迷路〟は、本当になかなか面白いものだった。
ただの迷路ではなく、所々にいろいろなギミックがあり、一筋縄ではいかないようになっていたのだ。
行き止まりだと思っていた場所が、押してみると扉になっており、進めたり、アイテムを揃えると、新たな道ができたり。
初めての体験に、私は高揚していた。



「…ふふ」



笑顔で話し続ける私に、突然、悠里くんがおかしそうに目を細める。
何の脈略もなく、笑った悠里くんに首を捻ると、悠里くんは柔らかく笑った。



「…ごめん、柚子が可愛くて、つい」



手の甲で口元を隠して笑う悠里くん。
輝いて見えるのは、太陽の光を浴びているからなのか。

推し、相変わらず尊い。



「あ!いた!」



悠里くんの笑顔に尊さを感じ、世界に感謝していると、少し遠くの方からそんな声が聞こえてきた。



「…て、鉄子せ、じゃなくて、鉄崎先輩!」



それからその声は私を後ろから呼び止めた。



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