推しに告白(嘘)されまして。



一年進学科の舞台、〝白雪王子〟はあの、華守千晴が主演をするということで、学校中で大変注目されていた。
そしてそれと比例するように、千晴の相手役、お姫様役にも大きな注目が集まっていた。

千晴の相手役は一体誰なのか。
一年進学科の中でも美人と呼ばれている橋本さんなのか、それとも、千晴には負けるが美形の南くんか。
さらにはウケ狙いで、担任の飛鳥先生なのか、など、誰がお姫様役をやるのか、日に日に注目度は高まり、噂は流れ続けていた。
そこで、一年進学は、その注目度と噂を利用し、お姫様役を当日まで明かさないという戦略を立てたのだ。

しかし、それにお姫様役に選ばれた男子生徒が耐えられなかった。
日々受け続けるプレッシャーに今日、ついにダウンしてしまったらしい。

今更誰がお姫様役になるのかと一同騒然。
学校中の注目が集まるお姫様役をもう誰もやりたくなかったのだ。
今日まで上げられ続けた期待を裏切らず、誰もが納得いく千晴の相手は誰なのか。

悩みに悩んだ末、その場にいた千晴が、ふと口にしたらしい。


「柚子先輩がいい」


と。



「千晴くんの提案にクラス全員満場一致で賛同しました!お姫様役にはもう鉄崎先輩しかいない、と!鉄崎先輩なら誰もが驚くだろうし、期待を裏切らないし、何よりも千晴くんの相手は鉄崎先輩しかいません!」



最初こそ泣き出したそうな顔をしていた女子生徒の1人が、いつの間にか興奮気味に私の手を両手で掴む。



「千晴くんが鉄崎先輩に心を開いていることは明白です!裏では付き合っていると…」



さらにもう1人の生徒がキラキラと瞳を輝かせて、こちらを見たが、その視線はある場所へと移って、気まずげなものへと変わった。
女子生徒たちの視線の先には、私と表できちんとお付き合いしている公式彼氏、悠里くんがいたからだ。


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