推しに告白(嘘)されまして。



俺と鉄崎さんは付き合っている。
けれど関係はあまり変わらない。

付き合っているのなら何かしなければならないはずだ。
だが、あの鉄崎さんに何をすればいいのかわからない。
そんなことを思い、ずっと動けないでいると、何と鉄崎さんの方からアプローチをしてくれた。

俺はそんな鉄崎さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
一緒に帰ろうと誘うのも、連絡先を聞くのも、本当は俺が男としてしなければならなかったことだ。
それを受け身になってどうすればいいのかわからず待つなんて。
夢なのか現実なのかよくわからないからとずっとずっと悶々として。
何て情けないのだろうか。

そう思ったあの日から、俺はちゃんと彼氏らしく振る舞えるように積極的になろうと決めた。

そして鉄崎さんと付き合い始めてから1週間。
朝は互いに部活や委員会活動などで、時間が合わないので、一緒に登校することはないが、下校はなるべく一緒にするようにし、昼休みも予定の合った日だけ一緒に過ごすようにした。
もちろん連絡もこまめに取るようにしている。

その結果、この1週間で俺たちは何となく付き合っているような雰囲気を作り出すことに成功していた。
もうただの知り合いの雰囲気ではないはずだ。

それからここからは意外な誤算だったのだが、俺は鉄崎さんと共に過ごす時間が案外好きだった。
最初は付き合ったのだからと義務感で動いていた俺だったが、鉄崎さんとの会話は面白く、今では友達と話すような楽しさがあった。
あんなにも怖い印象の強い鉄崎さんだが、一緒にいると案外よく喋り、よく笑うのだと気がついた。


今日もそんな鉄崎さんと何となく連絡を取り合いながらも、俺は自分の部屋で明日の準備をしていた。
部活用のカバンに練習着を詰め、他に必要なものも入れていく。

そんなことをしながらも時折スマホを見ると、鉄崎さんからこんなメッセージが入っていた。



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