推しに告白(嘘)されまして。
3.初めてのデートは紛れもなく天国。
1.王子の苦悩 side悠里
side悠里
鉄崎さんと付き合い始めて1週間が経った。
最初の数日は顔を合わせれば挨拶をする、顔見知りから知り合いに変わった程度の変化しかなく、本当にあの告白の返事は現実だったのか、夢ではなかったのか、と疑う日々を送っていたが、それでも一応鉄崎さんと付き合っていることにさせてもらった。
鉄崎さんと付き合うことになってからも、たくさんの人に告白されそうになったからだ。
誰かが俺に告白する為に俺を呼び出そうとする度に、それとなく彼女の有無を聞かれる度に、俺は鉄崎さんに申し訳ないと思いながらも、「鉄崎さんと付き合っている」と言ってきた。またバスケ部員のみんなも俺の練習時間を確保する為に、本人たちも半信半疑でだが、一生懸命、俺と鉄崎さんが付き合っている事実を学校中に広めてくれた。
だが、もしもあの時の返事が実は夢だったのなら。
鉄崎さんを知らぬ間に巻き込んでしまっている現状にやはりとても申し訳ない気持ちなってしまう。
なので、俺はよくあの場にいたバスケ部のみんなに確認していた。
あの告白の返事は現実だったのか、と。
するとみんなはいつも「信じられないが現実だった」強く頷いてくれた。
あの時、俺はあの場にいようとしたバスケ部のみんなに鉄崎さんに失礼だからどこかに行くようにと強く言ったのだが、彼らは「俺たちのエースの大事な局面だから」と真剣な顔で食い下がり、あの場から離れようとしなかった。
なので、最終的に俺が折れた。
どうせフラれて恥ずかしい思いをするのは俺なのだから鉄崎さんには悪いがもう仕方ない。
そんなあの場にいた彼らもあれは現実だと言う。
あの場にいた誰もが鉄崎さんの返事に耳を疑ったらしいが、それでもあの場にいた誰もが鉄崎さんが俺の告白を受け入れた声をきちんと聞いていた。
俺とあの場にいた部員。全員が鉄崎さんの返事を確かに聞いているのだ。
関係の変化がないとはいえ、あの日を境に俺と鉄崎さんは一応付き合うことになったようだった。
だから俺たちは練習時間確保の為にも鉄崎さんという存在を利用させてもらうことにした。