推しに告白(嘘)されまして。
13.推しと遅めのクリスマス。

1.クリスマスをもう一度





side柚子



12月30日。
年末の駅内は様々な人で溢れ、賑わっていた。

カップルや子連れの家族、若そうな夫婦に、大きなキャリーケースを引く若者。
たくさんの人が行き交うここで、私は軽やかな足取りで、ある場所へと向かっていた。
そのある場所とは、もちろん悠里くんとの集合場所である駅前の時計塔だ。

鷹野高校バスケ部は、私が観戦した次の日、準々決勝で、惜しくも敗退し、ウィンターカップの成績は、ベスト8に終わった。負けてしまったが、晴れて目標であったベスト8を達成することができたのだ。
準々決勝の日は予定があったので、配信で悠里くんの勇姿を見守っていたが、準々決勝もとてもいい試合で、涙なしでは見られなかった。

推しを偽の彼女として、壁となり支えた結果が、少しでもあのベスト8に繋がったのだと思うと、感慨深く、誇らしい。
私はきっと、悠里くんを推す者、ファンとして素晴らしい仕事をしている。

悠里くんはウィンターカップが終わり、昨日こちらに帰ってきた。
そして、2人とも予定が空いていた今日、約束のクリスマスパーティーをすることにした。

だが、私は少しだけ心配だった。
昨日激闘から帰ってきたばかりの悠里くんはかなりお疲れなのではないのか、と。
私なんかとクリスマスパーティーなんてして大丈夫なのだろうか。

そんなことを思いながらも、集合時間よりも1時間早く、時計塔前に着くと、そこにはもうダウンにマフラーの冬装備悠里くんがいた。

心なしか冬の太陽の光が悠里くんにだけ射しているように見えた。
…神々しい。

思わず見惚れてしまったが、それどころではないことに私は気づいた。

お、推しを寒空の下、待たせるなんて!
ファン失格だ!
1時間前では遅すぎだった!



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