推しに告白(嘘)されまして。




私は軽く首を横に振って、私の思考からさっさと千晴を追い出した。

今は生徒たちの服装チェックの時間だ。
冬休み明けは夏休み明け同様、生徒たちの気が緩む。
少し気を抜くと、すぐに校則違反生徒を見逃してしまう。

気持ちを切り替えて、再び生徒の波に厳しい視線を向けていると、その波の奥から朝日を浴びてキラキラと無駄に輝く金髪が現れた。

あの堂々としたダイナミック校則違反は間違いなく、紛うことなく、100%、千晴だ。



「華守千晴!」



人混みの中から厳しい声で千晴を呼ぶ。
すると、千晴は嬉しそうにこちらに歩み寄ってきた。



「おはよぉ、先輩」

「おはよぉ、じゃない!今日も今日とて違反が多すぎる!」



瞳を細めて笑う千晴の相変わらずさに頭が痛くなる。

ゆるゆるのネクタイに、ブレザーの下には学校指定のものではないグレーのセーター。
さらに耳にピアスまである。
そして首元には私がクリスマスにあげたベージュのマフラーが巻かれていた。



「それ、使ってるの?庶民の中古品なのに?もっといいやつあるでしょ?」



つい目についたマフラーに、思わず疑問の視線を投げる。しかしそんな私の様子など気にせず、千晴は「これが一番いい」とマフラーを大切そうに触った。

…変なやつ。

いつものようにそう思うのだが、それと同時にまた胸がぎゅう、と締め付けられる。
謎の不調だ。
寒さで体調が優れないらしい。



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